「血蝙蝠」(横溝正史)

謎解きとして楽しめる作品です

「血蝙蝠」(横溝正史)
(「血蝙蝠」)角川文庫

肝試しの一番手に選ばれた通代が
目的の幽霊屋敷に到着すると、
その壁には
まだ生乾きの血で描いた
蝙蝠の絵があった。
そしてその傍らには
女性の刺殺死体が
横たわっていた。
それ以後、通代は
謎の傴瘻男に付け狙われ、
ついには…。

由利・三津木コンビシリーズ
短篇作品です。
肝試しのために忍び込んだ幽霊屋敷に、
何と直前に殺されたと思われる
死体があり、
壁には血で描いた蝙蝠の絵があった!
横溝特有の
おどろおどろしい殺人事件です。

殺害されたのはある映画女優。
そして傴瘻男は
その女優の元恋人らしいことまでが
比較的早い段階で明らかになります。
でも、その二人と通代の間には
まったくつながりがありません。
女優の殺害と通代の襲撃は
どう関わっているのか?
そこが本作品の
読みどころとなっています。
そして謎解きとして
楽しめる作品でもあります。

本作品の読みどころ①
肝試し直前の殺人事件の謎

読み手にとって最大の謎は、
肝試し直前に起きた殺人事件は
偶然か必然かということです。
通代と被害者の女優は
まったく接点がなく、
人気の少なくなった避暑地の
目立たない場所にある廃墟で、
タイミングよく
殺人事件と肝試しが重なるのか?
これが事件の謎を解く
一つの鍵となっているのです。

本作品の読みどころ②
執拗に現れる蝙蝠の絵の謎

三津木俊助が通代を保護して
自宅まで送った際、
突然現れた蝙蝠の影。
これは車のヘッドライトに
蝙蝠の形に切り取られた紙が
貼られていたという
単純なトリックなのですが、
では誰が?どうやって?
これももちろん事件の謎を解く
一つの鍵となっているのです。

実は同様のトリックは、
同じ由利・三津木シリーズの
「悪魔の家」でも使用されています。
時系列では
本作品・血蝙蝠事件の方が後ですから、
俊助は同じ手口で
二度騙されたことになります。
俊助は実はぼんくらなのか?という
疑問はこの際置いておきましょう。

本作品の読みどころ③
怪しい傴瘻男の正体は?

これについては
ぜひ読んで確かめてください。

殺人の動機が
最後に後出しじゃんけんのように
提示されます。
その動機が解ってしまえば
何のことはないのですが、
逆にその動機が解らないから
謎が謎を呼んでしまうのです。

今夏TVドラマとなる
「探偵・由利麟太郎」に合わせて
本書も復刊されました。
どのような映像となるのか、
今から楽しみです
(多分観ないと思うのですが)。

(2020.5.31)

OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像

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